なぜ今、手書きの手紙か
手書きの手紙というと、どんなことを思い浮かべますか。「若い頃はよく書いていたけれど、最近はめったに書かなくなった」とか、「学生の頃、交際相手と文通していたことを思い出す」など…。手紙を通して青春時代の甘く切ない思い出が一瞬にしてよみがえるという人もいるかもしれません。
わたしは子どもの頃から手紙を書くのが好きで、手紙ばかり書いていました。なぜ手紙なのか、その理由を考えてみると、口ベタの反動なのだと思います。友だち同士の他愛のない会話なら困らなくても、自分の胸の内にある伝えたい気持ち、わかってほしい想いを声に出して伝えることが大の苦手でした。
その一方で、書くことでなら自分のペースで言葉を選んで伝えられます。その上「手紙をくれて、ありがとう」と相手に感謝され、喜んでもらえるのです。
文章を書くライターとして起業し、手紙文化の振興を志にしている今も1年に1000通くらい書きます。「え、そんなにたくさん?」と驚かれるかもしれませんが、わたしの場合、いつも2~3行、長くても5~6行です。
携帯メールやSNSがコミュニケーションツールの中心になった今、手書きの価値が見直されています。滅多に目にしなくなったからこそ「わざわざ手間をかけて自分のために手書きしてくれた」という喜びが、好意や信頼となって返ってくるのです。
長文を書く必要はありません。便箋いっぱいにつづられた長文の手紙はときに重く感じられることもありますが、短い文章でさわやかに文字をつづれば、相手に「返事を書かなければ」というプレッシャーを与えません。たったひと言「いつもありがとう」だけで、いいのです。お互いの心の距離がぎゅっと縮まるのを感じるでしょう。